オンライン利用拡大行動計画の概要(厚生労働省)から感じること

先週の14日は電子政府推進員の会議に出席していた。会場の高松市に四国各地から各士業やITコーディネーターから選ばれた推進員が集まりそれぞれ意見が出された。
総じて現在の電子申請プログラムは実務現場から言わせると使いにくく、システム設計も旧態の手法で構築されているのではないか、現状は、まだデータ処理は少ないからいいものの今後データ量が増えるについてパンクしそうだという、システム専門家からの手厳しい意見も出され現場のニーズをくみ取るという点では有意義な機会であることには間違いない。

その中で特徴的なことは、厚生労働省の電子申請は一番積極的であるように感じる。
電子申請の対象手続きの見直しがあり、特に重点手続として21手続を選定し、各省庁の中でイニシアティブを取っているのが印象的である。
他の税理士や司法書士行政書士が関与するものについては、業界はもとより管轄官庁においても、電子化を推進する具体的な手続そのものも明確にはなっていないのだ。
このほど発表された「オンライン利用拡大行動計画」(厚生労働省)をみるとさらに注目すべき点がいくつかある。
これらを踏まえて我々社労士は今後電子申請に取り組んでいかねばならないだろう。
詳しくはこちらから資料が入手できるのでご参考に。
http://www-bm.mhlw.go.jp/sinsei/torikumi/09/dl/01.pdf

今後の拡大普及としては、職業安定所社会保険事務所の窓口に電子申請体験用の端末機を設置するとか、中小零細事業主等に配慮した利用サービスとしてオンライン入力の補助・代行サービスの充実を図る、とある。

また、社会保険労務士の協力を得て、適用事業所に対し電子申請の利用勧奨を行う(予算要求中)。
つまり社会保険・労働保険関係手続を行う機会の多い社会保険労務士と連携し、事業所等への利用勧奨等を図る、とある。

これらをみても厚生労働省は重点手続の今後5年間の目標利用率を70%においている。
さらに早期に効果が期待できる「先行手続」の目標利用率は65%という目標設定だ。

つまり、これらから私が感じたことは、社会保険や労働保険手続の専門家と称される社労士が申請システムを「使いにくい、まだ難しい、面倒だ」といって取り組まないのはいかがなものだろう。
せっかく厚生労働省が社労士に代理業務として電子申請にあたっての優遇措置を講じていただいて、しかも指導者としての期待をかけてもらっているのに、それに応えないでいると、結局はその独占業務すらも脅かされてくることが予想されないか。
法律で定めているのは過去の窓口業務を前提に規定されているが、インターネットの普及や社会保険庁の解体などで組織系統も大きく変化し、手続の流れも大きく変わるだろう。事実この秋から健康保険の給付関係や被保険者証の交付も「健康保険協会」という組織に移管していて、社労士関与の事業所の健康保険証の交付も変わってしまった。

社労士が「代理申請」という独占的なアドバンテージである電子申請に取り組まず、あぐらをかいていると、具体的には次のような事態が想定される。
先の行動計画によると、社労士の顧客のほとんどである中小零細事業主らが職業安定所社会保険事務所の窓口で親切な職員に電子申請を教えてもらったり、時には代行してもらったりするケースが出てこよう。
人材サービス会社が電子申請の指導や入力代行を行ってくることも予想される。法律の規制の隙間をかいくぐるのは容易だ。
民間企業は利益追求にかけては予想だにしないビジネスモデルを考え、顧客のニーズに応えきめ細かいサービスに徹する。

そうなれば顧問の先生は電子申請については何にも教えてくれないし、役所の窓口で代わりにやってもらえるから、顧問契約は解約しようかな、という事業主が出てこないとも限らない。いまでもそういう意識を持たれている経営者は潜在的に多いのではないか。

時代はどんどん変化するわけで昨今の金融危機や景気低迷のあおりで、なるだけ金をかけずに自分らで出来ることはやろうという傾向や風潮ができているのは確かだ。加えて既存の社労士事務所のサービスが旧態依然のままだ。
資質強化もはからず従来のやり方だけを固執する士業はサービス対象者から見向きもされないだろう。

年に一度の電子政府推進会議に出席すると、やはり世の中の今後の動きがわかってくる。
国の施策の動向で、今後制度や流れはどう動こうとしているのか、自分らが何をしなければいけないのかを考えることができる。

この電子政府推進員、もともと各県の士業の団体の中から適任者を推薦してもらい、総務省が委嘱しているものだが、4年目になっても一度もこの会議に出席されない委員の方がいるのには閉口する。
その方々は個人的な立場で委嘱を受けているのとちょっと勘違いをしているのではないか。
個人宛に委嘱を受けても、それぞれの士業や各県を代表して、その成果、内容を各団体に伝えそれぞれ先導的な行動をとってもらうことも期待されて選ばれているのである。

その点に気づけば、私的な用事はいろいろあるものの、今まで一度も会議に出席されない委員というのもいかがなものかと思う。
こうした委員とは、ある面組織を背負った立場であることを自覚し認識を持っていただきたい。
そうであれば、努めて会に出席しそれぞれの立場で中央に意見具申をする義務や機会があるのに、それを自ら放棄しているといえる。
そうした方々はこの推進員の委嘱にあたっては自ら辞退すべきで他の適任者に任せることを本来考えるべきであろう。

一度も会に出席されない委員は所属団体を通じ遠慮してもらうことも、次回からは総務省の方も考慮すべきであろう。
そうした委員を通じて会員への情報が行き渡らない点は、世の動きに遅れを取り業界自体の縮小につながる重大な問題であることを団体の関係者も本当は気づかねばならない。