誰のための電子申請か!?社労士の「送信代理」の持つ意義

 社会保険の算定基礎届を社労士の電子証明書のみで可能となった電子申請システムで行ってみた。
従来の事業主に交付されるID・PWを使わなくてもいいようになって初めての電子申請である。
電子申請自体もこの春にe-Govシステムに全面的に変わってまだそれほど月日が経っていない。
6月23日の省令改正により社労士の電子証明書のみで行えるようになったため、そのためのマニュアルもまだ整備されていないものと思い、先の算定基礎届を試行錯誤でやってみたところ、当初はなかなかスムーズに進まない。が、持ち味の勘を働かせて無事成功したはいいのだが、総括表の画像ファイルをスキャナーで取り込んだファイルを添付するようにとあるが、なかなかうまくいかない。
しょうがないので、それは後回しにと、とにもかくにも申請自体を完了させてみた。

 腑に落ちないので、全国社会保険労務士会の電子申請担当者に問い合わせたところ、6月23日省令施行による算定基礎届の電子申請のやり方のマニュアルが連合会のウェブサイトにアップしてあるとのこと。電子申請委員である私にはそんな重要な知らせは県会からも連合会からもどこからも来ていない。連合会のサイトはしばしばチェックしていたが、そんな新着情報をわかりやすく知らせるようになっていなく、なかなか探しにくいところにリンクしてあったことに気がつく。
連合会もあまり知らせたくないのだろうと思わず疑いたくもなるような感じだ。

それはさておき、なぜ私がこの電子申請にこだわる理由は何故か、について話してみたい。

多くの社労士仲間が実はこの電子申請にそれほど取り組んでいない。県内は殆ど皆無といっていい。
というのも、現状のシステムはお世辞にも使いやすく出来ているとは言い難い。
研修会や電子申請関係の委員の間でも不評ではある。
手間暇や慣れないパソコンでの作業の苦労を考えると、実際はほとんど敬遠がちなのも事実である。
ただ社労士の電子証明書の取得率は悪くない。多くはほとんどそれを日の目にすることもなく眠らせているのが現実である。もっと使いやすくなれば考える、というのが彼らの口癖なのだが。

 本当にそれでいいのだろうか?と私は考えている。
ややこしくて慣れにくく手間暇のかかる作業は、本当は自分も避けたいところではある。
でもそれは、あくまでも我々の都合だけの理由に過ぎない。私は、電子申請を普及させる目的は、これ以外にはないとあえて断言する。
それは何か? つまりそれは、クライアント(顧客)のコスト低減につきる。

コストとは、すなわち労務にかかる諸費用、我々社労士の顧問報酬などの費用を低減させることである。たんにコストを下げるだけではない、品質を維持した上での労務管理費の節約である。
そのためには、我々社労士の企業努力が欠かせない。そのための方策がこの「電子申請」であり、それを普及させるにあたっての特権を得た社労士の電子証明書のみで可能な「送信代理」なのである。
加えて、今日の原油高の影響で企業はコストの節減に敏感だ。

  非正規社員の比率が高まるなど、これまで社内で行ってきた社会保険、労働保険の届出に代表される労務の固定費をいかに引き下げて、むしろ外注化したほうがコスト的にも有利となるだろうと考える。生き残るためには必要不可欠だ。
そのうえでより品質を一定レベル以上に保つことがこれからの企業経営には欠かせないだろう。
そうした時代の変化に対応したニーズに応えるためには、私たち社労士にも電子申請を積極的に推し進めることによりそのメリットを十分に顧客に還元することが求められているものと確信する。
そうでなければこの先多くは淘汰されていくに違いないし、システムが使いづらいとか、面倒くさいとか言っているのは、クライアント志向から逆行していることにすぎない。

電子申請はあくまでも我々専門職と顧客との絆をきめ細かく結ぶためにはかかせない有効な仕組そのものなのだから。