NPO実務講座【労務編】の講演を終えて

 7月12日に高知県ボランティアNPOセンター主催の標記の研修会の講師に招かれました。
毎年連続してご依頼をいただき、もうかれこれ6年ほどになるのでしょうか。毎回NPO関係の団体の方にどのようなお話をすればよいのか、悩むところですが、社会保険手続のことをあれこれと詳細にお話しするより、まずそれらの前提となる労働契約関係についての法知識を中心に置いてお話しています。
なぜなら、NPOで活動する人々をまず類型化し、労働法令が適用となる人たちはどのような雇用形態なのか、契約関係にあるか否かをしっかりと押さえておくことが非常に重要になるからです。
役員の方で労働の対価としての報酬が支払われている人がいるのか?専従職員、フルタイム勤務する人など当然にその適用を受ける人がいるのか?
また一般にパートタイマー(短時間労働者)と言われる人がいれば、社会保険、労働保険の適用はどうなるのか?NPO関係で特有の一番悩ましい「有給ボランティア」と称される人であっても労働者性を有する方では無いのか? それらをその名称を問わず実態に即して判断すべきであることなどを説明するようにしています。
この日の受講者の質問の中にも、やはりNPO法人内部で、関わる人たちに活動をお願いするときに、労働契約を結び労働の対価として賃金を支払う使用従属性をもとに活動を依頼しているのか、あるいは「ボランティア」として請うているのかがご自身の団体の中でもいまいち不明確であり、基本的にまずそのことを明確にしておく必要があろう旨を回答したものがありました。
NPO法人は特定非営利活動を行う際にはいろんな優遇措置はありますが、例え非営利活動を行っていても一般の企業と同じように労働者を使用するのであれば、当然に労働法規等の適用を受けることにはなります。
 一定の志にもとづきいろんな方がNPOや社会奉仕関係の団体等でそれぞれ活動をなされるわけですが、労務に関わる知識は円滑な活動を進めるうえではやはり欠かせません。
ここ最近企業等で法令遵守を欠いた行動や認識が問われるなか、我々の扱う労務関係の法律知識についても、認識不足による問題が露呈し、まだまだコンプライアンス自体が軽視されているようにも感じます。
加えて就業構造の変化による非正規社員の増加や雇用問題などの弊害が顕在化しています。
NPOや企業にせよ、その使命を全うするうえでは、「ひと」が働きやすい環境をどう構築していくのかはとても大切な課題ではないかと感じています。