個別労働紛争解決研修の応用研修に参加して

11月20日〜21日は社団法人日本労使関係研究協会(JIRRA)の主催する個別労働紛争解決研修の応用研修に参加してきました。
この研修は労働紛争の防止及び適正な解決を図るための適切な人材を養成することを目的として行われているものです。実務的には労働審判などにあたる審判員や個別労働紛争にあたる特定社会保険労務士などの専門家を対象としてより実践的な参加型のトレーニングによりカリキュラムが組まれていました。

この研修運営委員会のメンバーとしては法律学の権威である

労働法 第八版 (法律学講座双書)

労働法 第八版 (法律学講座双書)

菅野和夫氏をはじめ労働法の分野では第一人者の名だたる方々が入っており、テキストも労働審判制度実施前に弁護士を対象とした演習課題があるなど、よく専門書籍を出されている著名な講師陣が執筆、編纂されたもので非常に充実したものでした。
受講料は2万円ですが、労働関係法規集や
労働判例百選 (別冊ジュリスト (No.165))

労働判例百選 (別冊ジュリスト (No.165))

労働判例百選
も参考書として送られてきて、この研修内容とテキストであれば非常に安いものと思います。
当日は日経文庫で
労働契約法入門 (日経文庫)

労働契約法入門 (日経文庫)

を出された慶応大学の山川隆一教授や使用者側弁護士として労働裁判等の実績豊富な
解雇・雇止め・懲戒Q&A[補訂版](労働法実務相談シリーズ)

解雇・雇止め・懲戒Q&A[補訂版](労働法実務相談シリーズ)

丸尾拓養氏の事例的研修をはじめ、労働弁護団所属の幸長裕美弁護士が私のグループでの個別労働紛争トレーニングでの講師でした。

山川教授からはIRAC、つまりISSUE(問題点の抽出)、RULE(法的ルールの把握、要件→効果)、ANALYSIS(分析、事実認定)、CONCLUSION(結論、解決案の提示)による紛争解決へのプロセスを学びました。

丸尾拓養弁護士からは紛争解決にあたり、何が争点か、何が事実として足りないのかをしっかりと見定め、適用する法令や判例からついつい事案を当てはめようとして、紛争の本質を見極める思考が停止がちなパターンに陥りがちな専門家故の傾向をただされました。
雇い止めの事例にしても、その判例となった事件にある背景や特殊事情をふまえての裁判官の判決内容を分析することの大切さを説かれていたのが印象に残っています。

最後の紛争トレーニングでは弁護士の研修でも審判の内容と調停案につき見解が分かれたような事案でしたが、最終的な解決案としての出し方などは参考となりました。
あっという間の2日間の研修でしたが得られたものは大きかったように思います。
これらの成果を今後の紛争解決事案に生かしていければと思っています。